[D4] 開発状況アップデート – 2021年6月
公式ブログにて公開されている「ディアブロ IV 四半期アップデート」の内容を要約して紹介します。2020年6月の今回は、プレイヤーキャラクターやモンスターなどのアートについて、開発中の画像・動画を載せて述べられています。全文は公式ブログを御覧ください。
目次
イントロダクション
アートディレクター JOHN MUELLER
リードキャラクターアーティスト ARNAUD KOTELNIKOFF
キャラクター担当アソシエイト・アートディレクター NICK CHILANO
イントロダクション
BlizzConlineでは「ローグ」クラスの発表をしました。それにより皆さんからの反応を得られたことは私達にとって素晴らしい体験でした。加えて「ディアブロ イモータル」や「ディアブロ Ⅱ リザレクテッド」と並行して、より大きなディアブロファミリーの一部としてアップデートを共有できたことを嬉しく思います。
今回の主題は、プレイヤーキャラクター、モンスター、キャラクターアートです。
アートはディアブロを「ディアブロ」たらしめる重要な要素です。ランダム化されたダンジョンや緻密なアニメーションとエフェクトによって作られる戦闘はプレイヤーの感情をかき立てます。キャラクターアートも重要です。「ディアブロ Ⅳ」はシリーズ史上最高のカスタマイズオプションが用意されています。モンスターに関しては、新しい敵を作り出すとともに、定番をアップデートしています。
詳細はアートディレクターのJohn Muellerと彼のチームに任せようと思います。
是非、皆さんのご意見・ご感想をお待ちしています。これから年末にかけては、サウンド・デザインやエンドゲームのシステムについても詳しくお話していきますので、最新情報をお見逃しなく。
ゲームディレクター:Luis Barriga
アートディレクター JOHN MUELLER
「ディアブロ Ⅳ」のアートは、「ディアブロ Ⅲ」から非常に多くの変化がありました。リード・キャラクターアーティストのArnaud Kotelnikofとキャラクター担当アソシエイト・アートディレクターのNick Chilanoがお話しします。今回はまだ開発中のコンテンツが多数登場しますが、私たちの狙いは、コンテンツを早期にお見せすることで、開発の方向性について知ってもらうことにあります。現時点で完成している内容は皆さんが実際にゲーム内で目にするものにかなり近くなっていると思います。
開発初期には、最新のツールや技術を使う予定でしたが、リアリズムに傾倒しすぎてBlizzard作品の基本とも言える手描きの感触が失われることを懸念しました。私たちは単なるリアリズムではなく、素材や、キャラクターの外見という点でもリアルであることを追求しました。クオリティの追求の家庭では、レンダリングエンジンやオーサリングツールを完全に再構築する必要があり、新しくキャラクターチームを作る必要がありました。
私たちは「ディアブロ」で初となる幅広いキャラクターカスタマイズシステムを作り上げました。特に、私たちが装備やキャラクターに注いだ愛情と心遣いを皆さんが感じてくだされば、と思います。「私だけの最高のバーバリアン」といったファンタジーが自分だけのものではなくなるわけです。
私たちがキャラクターアート開発のパイプラインに行った投資がもたらしたメリットの一つは、自分たちのエンジンで、ゲームモデルを使った物語のカットシーンのほとんどを作れるようになったことです。過去の「ディアブロ」作品では、高解像度のシネマティックはすべてプリレンダリングされた映像でしたが、今作では自キャラクターのアップ動画なども見ることができます。
これから、ゲーム内の内容をアップにしたとき、どれぐらい綺麗に見えるかを紹介したいと思います。ただし、「ディアブロ」ではすべてのものは等角投影法(斜め上からの俯瞰視点)に従っています。キャラクターの解像度やディテールのバランスはすべてゲームカメラでも再現される必要があります。注意深く見れば、私たちがアーマーの類には大きめのシェイプを用いて、解読し易さに影響する要素を減らそうとしていることに気付くでしょう。
ここからはArnaudとNickとともに、キャラクターアートの奥深い世界をお楽しみください!
リードキャラクターアーティスト ARNAUD KOTELNIKOFF
私はキャラクターのカスタマイズと「ディアブロ IV」で開発したビジュアル面での改善について掘り下げたいと思います。
「ディアブロ IV」には過去の「ディアブロ」作品よりも奥深いキャラクターカスタマイズが用意されています。プレイヤーが変更できる要素として、顔、髪型、髭や眉などがあるほか、さらに装飾品(鼻ピアスやイヤリング)、化粧、そしてタトゥーやボディペイントといった体の装飾があります。また、キャラクターの皮膚や瞳、髪、髭や眉、体の装飾の色を変更することもできます。
まずは私たちが直面した問題についてお話しさせていただきます。
ダークファンタジー×物理ベースレンダリング(PBR)
「ディアブロIV」の世界は現実に即したリアリティを持つ必要があり、それを達成するためには物理ベースレンダリング(PBR)のカラーバリューという根本原則に従う必要がありました。つまり、ゲーム内のモノは光が当たったときの見た目や挙動がリアルでなければならないということです。
3Dアーティストにとっての挑戦は、コンセプトアートの色をPBRの数値に引き直すことでした。例えばPBRでは銀はとても明るく白に近いグレーですが、物質に反射があることでより暗い色に見えます。「ディアブロ IV」のキャラクターはすべてPBRの規則に従って、昼の光の下でも暗いダンジョンの中でも同じようによく見えるようにする必要がありました。
染料システムの拡張
染料システムでは、アーマー類のカラーパレットを例えば銀色から金色へと変えたり、白い布を黒い布に変更したりすることが可能です。
アーマーのパーツは兜や胸当て、手袋、下衣、ブーツなどがありますが、その各々を染色できます。すべてのパーツを違う色にすることもできますし、すべてのパーツに同じ色を一気に適用することも可能です。
カメラのクローズアップ
私たちはキャラクターが等角投影法で描画されたときに見栄えが良く見やすくすることを目指していましたので、ゲームカメラは最優先事項の一つでした。それだけでなく、カスタマイズ画面や動画内でズームインされることもあります。これをサポートするため、私たちはディテールマッピングと呼ばれるテクスチャのレイヤーを追加しています。ディテールマッピングとは小さな連続するテクスチャで、モノの表面に適用され、メインのテクスチャよりもシャープで細かい特徴を表現するためのものです。
「ディアブロ IV」のアーマーセットにはすべて2つの体型があります。こちらはバーバリアン用の細部に違いのある2種類のアーマーセットです。
以下は私たちのリアルタイムエンジンで録画したローグのスローモーション動画です。細部がはっきり見え、素材に対して光がどのように反射しているかがわかるかと思います。こうしたアーマーの多くは開発段階のものであるため、今後変更や修正が行われる可能性があります。
こちらはまた別のバーバリアンのスローモーション動画です。こうしたアーマーは開発段階のものであり、今後変更や修正が行われる可能性があります。
これらはまだ「ディアブロ IV」で実装されるキャラクターカスタマイズのほんの一部です。チームは最高のクオリティをお届けすることに全力を注いでいます。実際の「ディアブロ IV」で、キャラクターカスタマイズのために用意されたすべてのオプションを楽しんでいただければと思います。
キャラクター担当アソシエイト・アートディレクター NICK CHILANO
「ディアブロ IV」のモンスターを作るためのビジョンとプロセスをご紹介します。
モンスター作成を成功させるには様々な要素を組み合わせる必要がありますが、第一歩は、プレイヤーがそれを倒した時に満足感を得られるかどうかから始まります。モンスターは現実的には誰も見たことがない姿形でありながら、誰もが知っているもので、さらにそこに「ディアブロ」の絵筆で仕上げを加える必要がありました。
ビジュアルデザインとゲームプレイの意図
私にとっては、すべては目標から始まります。大抵は、このモンスターは何をして、プレイヤーにどのような体験をもたらすかをデザインすることから目標が導き出されます。ゲーム作りとはコラボレーションでもあります。ビジュアルコンセプトがアイデアを後押しすることもありますが、紙に描かれたデザインだけで十分な場合もあります。
ブラッド・ビショップ
ブラッド・ビショップのゲームデザイン目標は、直接ダメージを与える魔法の使い手にして、プレイヤー侵入不可の範囲ダメージの爆弾を作り出す、スペルキャスターを作ることでした。
ビジュアルに関しては、吸血鬼の系統で魔法を使う高レベルのボス、ということが求められていました。また、血の魔術の機能としてハート型を強調したいということも意識されていました。こうした発想が自然とまとまって、爆発する血の塊が血管から作り出されるアイデアが生まれ、それによってデザイン上求められた範囲ダメージを表現することになりました。
スケルトン・ロード
先程とプロセスは似たようなものですが、スケルトン・ロードには叩き台となるビジュアルコンセプトがありました。
アンデッドのスケルトン・ロードは骨と体のパーツが腱や血でつながれた姿で描かれ、私たちがゲームに合っていると感じたビジュアルを体現しています。そのため、あるデザインリードがこのキャラクターをベースにして戦闘を作りたいと発案しました。デザインチームは骨のビジュアルや骸骨の召喚、敵の進路を塞ぐ骨の壁、そして巨大な杖を駆使した独特な戦闘を作り上げました。特にこの杖は、スケルトン・ロードが地面に叩きつけて爆発する骨の欠片が降り注ぐ、という攻撃の一部にもなっています。
ゲームに適したアートのディテール
アセットについて、私たちは2つの視点から考える必要があります。それはゲームカメラと、キャラクターの全身像を寄りで捉えるボディサイズカメラです。
膨れあがった死体を食らいながら子蜘蛛を生み出すこの蜘蛛は、素晴らしいビジュアルデザインでした。いかにも蜘蛛らしい脚と胸部で、すぐにそれとわかります。細い脚が太い体につながっているところは、シルエットをまとめる上でいいバランスになったと思います。蜘蛛の高彩度の赤は体の目立たない地色によく映えて、このモンスターが画面に登場した瞬間に目につきます。
こちらのサキュバスも、興味深く明確なビジュアルを引き出した例です。詳細なディテールはゲームカメラの邪魔にならないものでありながら、ビジュアルの水準を押し上げています。ゲームカメラではお馴染みのシルエットを見ることができ、詳細に見ると、布の質感や透明感のある翼の皮膚、そして衣装についた金色の金具や縫い目、刺繍などが明らかになってきます。
こうしたディテールは、異なるカメラで見たときには情報過多とならず、接近したときにだけ見えるものです。
現代的なパイプライン
こうしたことを達成するためには、素晴らしくも不気味なこれらの創造物を具現化するプロセスと技術が必要でした。そのため、私たちは世界レベルのチームを結成して「ディアブロ」シリーズの水準をさらに引き上げる品質のモンスターやデーモンを作り上げました。
PBRにより、写実的でなおかつゲーム世界のライティングを忠実に反映する表面や素材を作ることが可能になりました。皮はより皮らしく、金属は金属らしく、対照的に生物の表面は生き物らしく柔らかで肉感のあるビジュアルを作り出すことができました。
この騎士は頭から爪先まで金属と布に覆われていますが、それぞれの素材が光源に対して異なる反射を見せます。素晴らしいディテールや、実際にありそうな、硬質な表面の素材が破損している部分なども見て取ることができます。
私たちのエンジンは、生体の表面も正確に表現することができます。毛皮も骨も、肉も血も、すべて正確に描画され、光源に忠実な反射を表現しています。何と言っても本作は「ディアブロ」作品であり、こうした素材の表現が重要であることは私たちの誰もが理解していました。
これで「ディアブロ IV」のモンスターの短い解説は終わりますが、私たちが恐怖や嫌悪感を引き出したり、「ディアブロ」らしいスタイルで敵を倒すときの高揚感を作り出したり、プレイヤーから多様な感情を引き出せるような敵やモンスター、魔物などを作り上げることを心から楽しんでいる様子は伝わったでしょうか。
最後にお伝えしたいことが一つあります。開発者として連日ただゲームを作っていると、日々画面に映る作品は、自分たちが好きな時に特権的に目にすることのできるもののはずなのですが、そうしたものを鑑賞する時間を持つことはおろそかになりがちです。だからこそ、こうしたブログを通して皆さんに向けて進捗や、どのようなプロセスを踏んでいるかをお伝えできて光栄です。
重ねてとなりますが、お使いのプラットフォームでぜひコメントをお寄せください。私たちはコミュニティからのフィードバックを楽しみにしています。皆さんのために作品を作れることを光栄に思っていますし、遊んでもらえる日を楽しみにしています!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。次の四半期ブログもどうぞお楽しみに!
– 「ディアブロ IV」チーム