[D2R] BlizzConline Deep Dive要約
2月20日に行われたBlizzConlineのDiablo II: Resurrected Deep Diveで語られた、開発者のメッセージを翻訳して掲載します。
今、ディアブロ2をリマスターする意味
ディアブロ2は、多くの人が知っているBlizzardにとって特別なゲームです。発売から20周年を迎えた今、その特別な体験を、今のゲーマーに今の技術で体験してもらいと思いました。
独特なデザインやアートを維持する方法
常にノスタルジアを思い浮かべることに焦点を当てました。20年前にプレイヤーが体験した、アートやモデリング、マップ等がそこに存在することで、素晴らしいゲーム体験を得られるはずです。
ビジュアルの改修は、7:3の割合で実施することにしました。7割は、形や色、色調を、元のスタイルを維持すること、3割は、前進的な新しいスタイルを取り込むことです。
2Dから3Dへの移行で苦労したこと
2Dから3Dをイメージすることはとても困難で、新しい物理ベースレンダリングが必要となりました。3D モデルになることで、光源に対応しなければならず、これらはほとんど0からの追加作業となりました。
落ちている宝石や装備などのアイテムもモデル化する必要があり、これらの作成には、オリジナルのドキュメントが役に立ちました。
元のデザインを作成したアーティストがインスピレーションを得た、歴史的な建造物や場所など、それら現実に存在するものからは、私達もインスピレーションを得られました。現実にある建物の説得力はとても高く、プレイヤーに没入感を与えてくれるはずです。
また、ディアブロ2はピクセルアートのゲームですが、参考画像として開発に使われた画像は、2Dではなく、3Dモデルから作られたものでした。
そこには、オリジナルには描かれていなかったニンニクやハムがあり、当時の開発陣が壮大な何かを達成しようとしていた意志が感じられました。
古いビジュアルと新しいビジュアルのスイッチ機能も、単なるアートの変換ではありません。新しいグラフィックエンジンの下では、オリジナルと全く同じルール・システムのゲームが動いているのです。
オリジナルの25FPSを維持したまま60FPSにする方法
攻撃がヒットしたときのアニメーションや、そこから復帰するタイミングは完全に一致しています。サーバーとのやり取りも全く同じで、プログラムは同じ動作をします。少なからず、私たちの努力の結果ですが、これはとても重要なことです。少しの差でも、オリジナルと異なっていたら、プレイヤーは違いに気が付くでしょう。
オリジナルの少ないフレーム数から、新しい滑らかなアニメーションを作るのには苦労しました。
ゲーム内のシネマティック、サウンドについて
合計28分のシネマティックは、ハイクオリティなものになりますし、オーディオ関連も全てリマスターされました。オーディオはサラウンド化され、様々な音響効果も加わっています。とても、豊かなゲーム体験ができるでしょう。
ディアブロ2には、頭蓋骨をアイテム欄に入れるときの「ポッ!」という、特別な音も存在しています。
また、足音には様々な種類があります。雨が降りはじめれば音に深みが増し、ジャングルでは木々の囁きを聞くことができるでしょう。
ただ、私たちが手を加えなかった音も、沢山あります。
Blizzardのゲーム作り
Blizzardが新しくゲームを作るときには、「楽しいことを見つけよう」というゲームデザインの哲学があります。これに基づき、改めてディアブロ2を眺めていると、まだ「楽しいこと」が見つけられるように思えました。
この「楽しいことを見つけよう」とする姿勢は、ディアブロ2のリマスター作業を行うにあたっての、柱となるものです。
そのため、私たちはコミュニティが何を望んでいるか、今どきのゲームにするため、私たちに何ができるかを深く考えました。
私たちはコミュニティのために、ゲームとその中身を、できるだけ維持したいと思っています。今回の作業が、リマスターではなくリメイクだったら、全く別のゲームになってしまったでしょう。
キャラクター間共通収納箱の実装
ゲーム体験を改善するため、何が必要かを考えました。そこで気が付いたのが、多くのプレイヤーが、キャラクター間でアイテムをやりとりするために、運び屋を利用していることでした。そのため、私たちは共通の収納箱を用意したのです。
ただ、この収納箱には制限もあります。まず、ラダーで使用しているキャラクターは使用できません。また、オフライン用のキャラクターが、オンラインの収納箱を使うこともできません。
UI(ユーザーインターフェース)の改善
HUD画面(画面下部の体力やマナが表示されている部分)は変わらず、球体の体力やマナゲージなど、オリジナルを維持しています。ただ、飛び出ていたステータス表示用のアイコンをスタミナバー付近に移動し、すっきりさせました。
アイテムのステータスを表示するための、高度な機能も実装しています。これにより、細かなステータス計算を、プレイヤーが卓上で行う必要もなくなっています。
また、ゴールドを自動で拾う機能も加えています。この機能は、オフにすることも可能です。
コンソールに対応し、コントローラーのことを考慮するようになると、様々な懸念も生まれました。例えば、特有のアイテム欄です。テトリスのようにアイテムを配置することになるこのUIは、PCで遊ぶこと前提に作られています。
ただし、このUIはDiabloのコアであり、削除してしまうと、ゲームが別のものになってしまいます。
コンソール対応で意識したこと
キーボードとマウスで操作することに、ディアブロ2の魂が込められています。なるべくなら、その本物の体験を維持したかったのですが、20年の時が経ち、新しいプレイヤー達が生まれていることも、考慮しなければなりません。
マウスはどこでも場所を指定できるのに対し、コントローラーでは特定のエリアという概念を追加しました。
ソーサレスのテレポートをコントローラーで行った場合、一定の距離をテレポートするようにしました。マウスでは変わらず、どこでもテレポートが可能です。これは、バーバリアンのLeap(リープ)も同様です。
拡張パック: Lord of Destruction
このリマスター版には、拡張パックのLord of Destructionが含まれています。ただ、拡張セット無しのクラシック環境で遊ぶこともできます。
細かい追加機能
SHIFTキーを押し続けることで、アイテムの比較ができるようになっています。また、キャラクター選択画面のキャラクターも、正面に大きく表示しています。キャラクターが大きく表示されることで、背景や雰囲気をより身近に感じられるようになるでしょう。
3Dの照明効果や音響の改善により、ダークで不気味な雰囲気も増しています。閉所恐怖症のような感覚を得る場所もあるでしょう。これは、本当に素晴らしい改善だと思います。
マルチプレイ
PvP(対人モード)は変わらず残っていますし、アイテムのトレード、チャット欄を利用したチャットも可能です。
ロビー画面については、サーバーの閲覧方法、パスワード入力等がスムーズに操作できるよう、改善したいと考えています。
そして、6か月間続いているラダーのシーズンも短くし、報酬アイテムも増やしたいと思い、調査を行っているところです。また、リーダーボードも保存し、過去のリーダーボードが見られるようになる機能追加も検討しています。
地域についても、米西部・米東部・アジア・EUと意識する必要は無くなり、Battle.netのIDを与えられたグローバルサーバーを利用することになります。
開発秘話
あるとき、Blizzard Northのフォルダの中に、大量の開発資料を見つけました。この「Blizzard図書館」とも呼べる資料は、開発作業にとても役立ちました。
グラフィックを書き直そうとしたとき、オリジナルのピクセルアートでは描画が不足している部分も、開発資料を見ることで、補完することが出来たのです。
ティラエルの翼に関しては、Macから取り出した当時の開発モデルを、そのまま使いました。ほとんど手を加えることなく、リマスター版に収めています。
サキュバスにも面白い話があります。オリジナルでは、アサシンの衣装をサキュバスが再利用していたため、リマスター版でも、新たに描いたアサシンの衣装を、サキュバスにも着せています。
リマスターの開発は、考古学に似ていました。開発手法は代々受け継がれているため、当時のディアブロ2の資料を見るだけでなく、ディアブロ1の資料も十分参考にできる資料となります。
また、プログラム内に書かれたコメントからヒントを得ることもあり、当時彼らがどのようにゲームを作成していかが垣間見えるのは、とても魅力的な体験でした。
オンラインプレイの問題への対処
キャラクターの複製、ボット、切断等、サーバーチームが様々な対処方法を生み出しています。
プレイ可能時期
公式ページから、テクニカルアルファの登録が可能です。ゲームそのものは、2021年内に発売されるでしょう。